昨年7月、長椅子の張替え修理を頂いたお客様より、椅子のモタレに施してある彫りの
一部が欠けてしまったという事で、修復する事が出来ないかご相談を頂きました。
欠けた場所はモタレ中央部の彫刻部分で、欠損した破片は無くなってしまったそうです。
しかし、欠損部は比較的小さいのと、残っている木部をベースに「パテ」などの充填材を
使えば、造形の修復は可能と判断。 また、一旦預かって工房で修理を行うと運搬に
伴う費用や日数も要する為、現場で修理を行う事にしました。
但し、欠損部分はモタレ中央の一番目立つ場所である事や、装飾部はすべて手彫りに
よるもので、欠けた部位の木の厚みは薄く、きれいに仕上げる為には高い修復技術が
要求されます。
* 今回の修理依頼品は、木部の曲線が魅力的な(品番:UP8803 販売終了)ネオクラシックシリーズの
長椅子です。カブリオール(猫脚)といわれる伝統家具様式を精密に再現した脚部。彫刻部の凹みには
グレージング、凸部にはハイライティング塗装が施してあり、クラシカルで優雅な仕上げが印象的です。
当時は金華山織りの他、本革張り仕様のモデルも用意されていました。
↑エポキシパテを適当な量で充填 ↑粗削り、調整
現地での修理は、お客様の時間を束縛してしまう事と修理作業上ある程度の
制限が出る為、その時の状況を十分理解した上でベストな修理方法を思案し
選択しなければなりません。
今回は速乾タイプの「エポキシパテ」を充填材に使用します。
これは粘土のように盛り付けが出来るのと硬化が早い為、短時間で造形作業に
取り掛かる事が出来ます。
↑ペーパーで丁寧に研磨し曲面を造形 ↑ラッカー塗料による補色、艶合わせ。
彫刻は手彫りの為、きれいになりすぎないよう刃物で彫ったような表面感を
出す感じで研磨していきます。 塗装は筆による補色でグレージング、ハイ
ライティングを施します。
最後に艶合わせのフラット剤を塗布して完了です!
所要時間は約60分ほどで完了しました。
今回の修理代金
修復工賃¥6,300 現地出張費¥5,000
合計¥11,300(税抜き)
2021年1月現在価格
今回はお客様の貴重なお時間を頂く事となりましたが、現地での修理を選択して
使用する資材、作業方法、所要時間など、イメージ通りに行わせて頂く事ができました。
ありがとうございました!