カリモクさんのウェブサイトでブログを掲載するようになってもう4年目ですね。最初の2年はインテリアセオリーについての連載、そして次の1年は「蓮夕」コレクションとエクレクティックをテーマに連載を行いました。
でも3年の連載でも、まだまだ書ききれないことがあります。ロンドンにいると、新しいこともどんどん起こります。ムーブメントがあり、トレンドが生まれます。
そこで今回からは、書ききれなかったセオリーや、新しいトレンド、ロンドンで暮らす中で見つけたインテリアの話題などを「ロンドンインテリア雑感」と題して、気の向くままに綴ってみたいと思います。また暫らくお付き合いください。
今号は、ちょうどミラノで世界最大のデザインショーが行われたばかりなので、トレンドのお話をいたします。
● トレンドとマーケット
今までのブログでも幾度となくトレンドについてお話してきましたが、ヨーロッパのデザインシーンにとって、トレンドは大変重要な意味を持ちます。
日本のトレンドはファッション界が代表しますが、インテリア関連の消費指数が10を超える英国では(日本はわずか3です)、インテリアのトレンドは、日本では想像できないほどダイナミックです。インテリアデザイン、プロダクトデザイン、建築、クラフト、ギフト、アクセサリーに至るまで、インテリア関連業界は大きなトレンドのうねりの中にあります。日本ではファッションとインテリアのトレンドが強くリンクするのを見るのはまれですが、ヨーロッパでは、ファッショントレンドとインテリアトレンドは同時に強く作用し合い、それは雑誌やショーウィンドウでも明白です。特にロンドンでは、ファインアート、ポップアート、アンティークもインテリアのトレンドを反映し、売れ筋も傾向も驚くほど毎年変わります。
そしてそれらトレンドの源は、世界的な社会事象、経済動向やイベントと深く関わっています。
つまり、大きなインテリア市場の中でビジネスを成功させるために、必要なマーケットに正しくアプローチするには、トレンドへの理解が不可欠なのです。
これは他の小売業でも同じですよね。ただ日本では、インテリアマーケットにおけるトレンド感が非常に希薄です。これは消費指数にも現れるように、日本のインテリアマーケットが欧米と比較してまだまだ小さいことの現れです。(日本の世界最大といわれるフードマーケットのトレンドがダイナミックなのは皆さん周知のとおりです。デパ地下のレベルなど、世界の他のどこの国の追随をも許しません)
しかしこれは裏返せば、インテリアには、まだマーケットが大きくなる可能性がある、ということです。
イギリス人の家に対する情熱は数字以上に高い。イギリス人にとって、家は自己実現であり、誇りであり、ライフスタイルの可能性であり、楽しみであり、家族の幸せです。
私は、そんなインテリアの可能性を日本の皆さまにも知っていただきたいと思って活動を続けています。
今後の日本経済にとっては新たな内需の開拓が不可欠です。インテリアはその可能性を秘めた産業です。
そんなわけで、今までもインテリアの面白さはしつこいくらいに書き続けてきましたが、今後もそれを続けていきます。
●春とトレンド
私たちNSDAでは、長年にわたりヨーロッパのトレンドを定点観測し続けています。
定点観測のベースはヨーロッパのデザイン3都といわれる、ミラノ、ロンドン、パリです。他の数多くの都市の見本市にも出かけますが、ある明確な理由によって、トレンド観察は3都市に集約されてきました。(その理由については、大きな紙面が必要なので、また別の機会にご紹介したいと思います。)
春にはその3都のうち、ロンドンとミラノが街を挙げてデザインウィークを行います。
3月のロンドンではFocusが、ミラノでは世界最大規模のインテリア見本市といわれるミラノサローネが華々しく開催され、世界中から多くのプロたちが新しいトレンドを見つけるために集まります。
下:3月のロンドンデザインウィークメイン会場となるチェルシーハーバーデザインセンター。150社に及ぶ世界の一流メーカーがプロのための常設ショールームを展開する。![]()
下:ミラノサローネ会場。30万人の入場者を集める世界最大のインテリアショー。ミラノ市全体がデザインのお祭りに湧きかえる。![]()
下:見本市会場はミラノ市内全域に点在。日本でもおなじみのメーカーは、美術館全体を借り切っての展示を行った。![]()
この中からいくつかご紹介すると、
ロンドンでは今夏のオリンピックを控え、英国、ロンドンを強く意識した色やモチーフが見られました。これは世界的なイベントがデザインに影響を及ぼしている好例です。2008年の北京オリンピックでもシノワズリが世界的流行になりました。
今年ロンドンはオリンピックだけでなく、女王陛下の在位60年を祝う式典が6月初旬に国家プロジェクトとして行われることもあり、すでに街全体がお祭りムードです。
デパートのショーウィンドウも英国一色。(Peter John's)![]()
去年もこの時期ウィリアム王子の結婚式で盛り上がっていました。英国人にとっては、誇り高き2011、2012年というところでしょうか。ヨーロッパの金融危機の影響もなんとかかわしてますしね。というより、別の理由もあり、ロンドンの景気はアッパーマーケットに於いてはバブル状態です。まさにロンドンの世界での位置付けがなせる業です。
このほかにも、英国の誇りを伝統工芸の技術で表したり、昨年の民族文様のトレンドを発展させたトレンドが出たりと、ロンドンでは、色、パターン、モチーフに於いて新しいトレンドも見られます。
ミラノでは、すでに多くのトレンドリポートが伝えているように、ヨーロッパ金融危機の影響がいたるところで見られました。でもそれだけではない、さまざまな興味深いトレンドの芽吹きもあります。
ミラノサローネでは、毎年面白いくらい、同じ手法やフォルムを数多くのメーカーが同時に発表します。まるで事前に誰かが「今年はこれで行きましょう」と手引きしているようです。そんな共通項もいつくも見つかりました。たとえば、以下の写真のようなボタンのモチーフがよく目立ったり(以下はCITCOによる大理石の壁面装飾)。はて、なぜでしょう。![]()
そんな共通項を追って行くと、そのトレンドの背景や原因が見えてきます。
●カリモク in ミラノ
カリモク家具は4年連続でミラノサローネに本会場と市内で出展しました。
本会場では日本からの優秀なメーカーを集めたSOZO.com の展示ブースで、カリモクの売れ筋商品を、その製作技術の高さを伝えるパネル展示とともに行い、真摯なものづくりの姿勢は、多くの来場者の共感を得ていました。今年のミラノサローネの流行の一つでもあるウォルナットカラーの茶色と、ポップで親しみやすいフォルムも人気の一因でした。![]()
「カリモクニュースタンダード」は、3度目となる市内単独会場での展示を行いました。
会場はまるでスタイリッシュなアパートメントのようなギャラリー。まさに海外からの出展に最も必要な環境を得て、そこで暮らしているような自然な展示はプロの絶賛を集めました。柳原照弘氏、カリモクデザインチームのオリジナルデザインに、オランダのショルテン&バーイングスをはじめとした、ベルギー、スイスから、急上昇中の若手人気デザイナーによるラインアップを加え、ますます充実したデザイン群となって圧倒的な存在感を放つ展示となりました。(以下写真:Aiko Onose)![]()
● トレンドの分析から
トレンドが映すものは、インテリアという大河の一筋のようなものです。しかし、その大河は人が定住という生活を得たところからその源を発し、さまざまな建築様式、そして文化や芸術も発展させ、暮らしを彩る装飾芸術を生み出し、家具を生み、やがてバロックに始まる国をまたいだトレンドを生み、国の覇権や経済の隆盛を映し、現在に至るデザインの潮流をすべて内包する大河です。今あるデザイン、トレンドはそれら過去の水滴の中から生まれ、さらに未来へと続く流れの種となるものです。
人類の英知が作り上げてきたもの、それが現在の住環境であり、それはさらに向上させる(少なくとも向上させる想いで生みだす)べきものです。人がいい環境、美しい環境で住みたいと思うことは人間として当然の欲求であり、権利です。プロはそれを実現させるために、どの時代も最善を尽くしてきたでしょう。その結果の一つがトレンドです。
だから、トレンドは単に消費社会の無意味さを映すものではなく、未来へつなげる種なのです。咲かせる種を作るのがプロの仕事です。
日本では最初に述べたマーケット環境から、トレンドに興味を持たない、あるいはトレンドに振り回されるべきではない、との態度を取るインテリアのプロも目立ちます。それはトレンドを表層的にしか捉えていない見解です。少なくとも、住環境の向上を生業とする私たちプロは、トレンドの本当の意味を理解するべきでしょう。
今後日本の業界に関わる私達プロは、マーケット発展のバロメーターである、デザイン分野すべてを巻き込んだトレンドを生みだすことを、インテリア産業発展のための一つの目標とすることが必要となってくるのだと思います。
◆詳しくトレンドを知りたいプロの皆様には、私が5月25日から東京、大阪、名古屋で行う2012ミラノ ロンドン トレンドセミナーをご案内します。
http://interiortrend.jimdo.com/
なおここでの収益金の一部は、震災復興支援「壁紙プロジェクト」の活動資金に充当されます。



